2011年4月11日月曜日

のび太「羽生蛇村?」

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1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:09:14.57 ID:JICdZaHU0

立てるのミスってた
最初は誤字修正版なんで見てくれてた人は適当に見逃しちゃって構わないです
SIREN1のSS、ネタばれあるんでいやな人は見ないの推奨



セミの鳴き声もいよいよ高まり、うだるような暑さがアスファルトを焼く夏休み中盤。

のび太達は、スネオの家でアクション映画鑑賞をしていた。

ジャイアン「うっおー、すっげー!!」

のび太「カッコいい~!」

しずか「そお?ちょっと野蛮すぎないかしら?」

スネオ「そんなことないよ!ほら、見てよこのワイヤーアクション!カッコいいなぁ」

のび太「この撮影場所ってどこなんだろう?随分沢山の場所を移動しているけれど」

スネオ「それがさ~、どうやら羽生蛇村っていう所で撮影されているらしいんだけど、
パパに頼んでも撮影場所へ連れて行ってくれないんだよ」

しずか「あら、それはどうして?」

スネオ「この羽生蛇村ってところは三方が山に囲まれてるから、今の時期は
雷とかが雨による土砂崩れが危なくてあんまり近寄りたくないって言うんだよ。
この映画も冬に取られたものらしいし、夏場は滅多な事が無いと近寄らないらしいよ」







2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:09:32.14 ID:JICdZaHU0

のび太「へぇ~、なんか、怖そうなところなんだね」

ジャイアン「でもよ、噂によると、羽生蛇村にはすっげーお宝があるらしいぜ!」

しずか「お宝?」

ジャイアン「なんでも、焔薙?とかいう世界でも類を見ないほどの名刀があるんだってよ!!」

のび太「名刀かぁ~、ちょっとおっかないけど、見てみたいや」

スネオ「へぇ、そんな噂もあるんだ。ちょっと羽生蛇村に行ってみたくなってきた」

しずか「そう?わたしはなんだか怖いからあまり行きたくないわ・・・それに、噂では
土着信仰を今でもやってるっていうじゃない」

のび太「土着信仰?」

スネオ「その土地だけに伝わる信仰さ。古い土地の集落では残っているっていうね。
羽生陀村も結構古くからあるから、それもあるかもね」

ジャイアン「うおーっ、なんだか面白そうなところじゃねえか!行って探検したいぜ!」

スネオ「うん、まあ確かに色々謎の多い場所だし、もしかしたらジャイアンの言う名刀や、
それ以外にも大発見があるかもしれないね。でも、いけないんじゃどうしようもないよ。
パパに頼んでもダメなんだから、他の人でもどうせダメさ」

のび太「それなら、ドラえもんに頼んでみようよ!」








3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:09:44.95 ID:JICdZaHU0

しずか「ドラちゃんに?」

のび太「ドラえもんのどこでもドアで羽生蛇村にすぐに行けるし、危なくなっても秘密道具で
何とかしてもらえるんだからさ!」

ジャイアン「そう言えばそうだな!さっそく頼んでみようぜ!」

しずか「ちょっと怖いけど、ドラちゃんがいるなら大丈夫よね・・・」

スネオ「じゃあ準備してからのび太の家に集合だね!」

一同「おーっ!!」

この時のび太達はまだ知らなかった。

この軽い気持ちでした行動のせいで、どれだけの恐怖を体験する事になるかを。





4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:10:08.32 ID:YCugyK2S0

ひぐらしかと







5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:10:10.19 ID:JICdZaHU0

――――――――――数時間後

ドラえもん「それじゃあみんな準備は良い?」

一同「うん!」

ドラえもん「・・・・今回はなんかちょっと嫌な予感がするんだ。皆、ぼくから離れないでね」

しずか「ちょっと、怖いこと言わないでよ・・・」

ドラえもん「ごめん、でもなんか胸騒ぎがするんだよ」

のび太「最近どら焼き食べてないからじゃない?」

ジャイアン「はは、ありうるな!」

スネオ「この冒険が終わったら、ママに頼んでたらふく食べさせてあげるよ!」

ドラえもん「!!たらふく!どら焼き!!ぬふふ!」

のび太「もうっ、涎は良いから早く行こうよ!」

ドラえもん「ごめんごめん、それじゃあ出発ー!・・・・・の前に、心配だから皆に一つずつ
秘密道具を渡しておくよ。出来れば使う事にならないと良いけど」








7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:10:36.07 ID:JICdZaHU0

のび太「もうっ、ドラえもんったら心配性なんだから!」

ドラえもん「そうかもしれないけど、備えあればうれいなしって言うでしょ?」

しずか「そうね、あるのとないのじゃ全然違うわ」

ドラえもん「それじゃあ、のび太君にはこれ、ジャイアンにはこれ・・・」

一通り配り終わった後、ドラえもんはこほんと咳払いをしてもう一度ドアに向き直った。

ドラえもん「それじゃあ、改めて出発ーー!」

一同は瞬時に羽生蛇村へと移動した。








8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:11:17.95 ID:JICdZaHU0

のび太達の荷物は
のび太=秘密道具、ショックガン
スネオ=秘密道具、ペンライト、財布
ジャイアン=秘密道具、バット、ボール
しずか=秘密道具、ペンライト
ドラえもん=ポケットその他

【野比のび太 前日/14:00:21 蛭ノ塚 県道333号線】

のび太「ここが羽生蛇村かぁ~」

しずか「なんか・・・イメージと違う」

スネオ「うん、空気が美味しいし、緑も凄い綺麗だね」

ドラえもん(やっぱりさっきの胸騒ぎは杞憂だったんだね。よかったよかった)

ジャイアン「んー、こんなにも綺麗な場所だと、歌いたくなるな!!」

のび太「え゛!?」

ジャイアン「なんだよぉー、歌っちゃ悪いってのかよ!」

スネオ「そうじゃないけど・・・ああ、もうお好きにどうぞ・・・」

ジャイアン「すぅ~~~~~~~~・・・・・・・お゛れ゛は゛ジャイア~~~ン゛!!!」

ジャイアン以外の一同「うわああああああああ!!」








9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:11:28.77 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「がきだいしょおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・

ジャイアン「ん、なんだぁ!?」

のび太「ね、ねえドラえもん!?なななんかか地面揺れてててないかな!?」

ドラえもん「マズイ!今の振動で土砂崩れが起きたのかもしれない!」

スネオ「ええええー!?どうにかならないの!?」

ドラえもん「そんな事言ったって・・・とりあえずみんなタケコプターを付けて!」

言うが早いか、ドラえもんは皆に素早くタケコプターを配り、頭につけさせた。

しずか「崩れてきたわ!早く飛んで!」プルルルルルーーーー

のび太「わっわっわわぁーーーー!!」プルルルルーーーー








10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:11:41.57 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「おわっ!上空も風がヤバいっ!!」プルルルルルーーーーーー

ドラえもん「土砂崩れの影響だ!皆、飛ばされないように気をつけて!」プルルルルルーーーー

スネオ「そんな事言ったって・・・・・・う、うわああああああああ」プルルルr・・・・

ビュオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

尋常ではない風が、間一髪上空に逃れたのび太達を容赦なく襲う。

その風の強さに押し負けて、スネオが森の方向へ飛ばされてしまう。

のび太「ス、スネオ!う、うわあああああ!!」ビュン!!

ドラえもん「ダメだ、この風、普通じゃないぞ!!」

しずか「た、助けt・・・・・いやあああああああああ」ビュン!!

ジャイアン「こんのぉーー!・・・・飛ばされてたまrかーーーーーーちゃーーーーーん!!」ビュン!!

ドラえもん「み、みんなバラバラに・・・・・うわああああああ」ビュン!!

最後まで残ったドラえもんも、無情にも吹き飛ばされてしまう。

五感ごと吹き飛ばされていく中で、ドラえもんはハッキリと何かが笑う声を聞いた。








11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:11:52.72 ID:JICdZaHU0

【八尾 比沙子 前日16:18:12】
「邪魔が入った気がするわ」

「くれぐれも儀式の邪魔はさせないようにね」

「失敗は許されないのよ」





12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:11:56.04 ID:58x0Xqw10

ちょうどこの前クリアしたわ
期待







13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:12:10.24 ID:JICdZaHU0

【野比のび太 初日/4:09:54 刈割 切通】

のび太「う・・・・う~~ん、ここは?」

気がつくと、のび太は川の近くで横たわっていた。

のび太「崩れた山は・・・見当たらない、か」

辺りを見回しても土砂崩れが起きた山は見当たらなかった。

どうやら随分と遠くまで飛ばされたらしい。

のび太「と、ともかく誰かと合流しないと!ひひ、一人でいるのは怖いし・・・」

出来るだけ物音をたてないようにひっそりと歩き出す。

気がついてから、なんだか妙に空気が重たい。

それに、来た時よりもずっと霧が深く、言い知れぬ暗さが漂っているように思う。

のび太(何も出ませんように・・・)








14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:12:26.39 ID:JICdZaHU0

無意識にポケットの中に突っ込んでいたショックガンと、ドラえもんから貰った名刀“電光丸”を握りしめる。

もしかしたらこれらを使う事になるかもしれない。

黒い不安に包まれる中、漠然とそう考えていると

ガサガサッ

川の上の土手で草が動いた。

風も吹いていないのに。

のび太「だ、誰!?」

上ずった声でたずねてから、しまったと思った。

何故なら、声を発することで、当然ながら相手に気づかれてしまうのだから。

ガサガサッ・・・・ガサッ

人影が、草むらから出てくる。

目を爛々と光らせながら、絶えず紅い涙を流し続ける人が。

屍人「み゛ぃづげだぁ♪」








15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:12:38.41 ID:JICdZaHU0

瞬間、時が止まる。

血の涙。青白い顔。手に収まる鋭い鎌。

のび太「う、うわああああああああああああ!?」

護身用に持っていたショックガンを出すこともなく、のび太は叫び声をあげながら逃げだした。

のび太(な、なな、な、なんだあれ・・!!
目から、チが、血が、血が!!!)

何度も転びながらも必死に川沿いの道を走る。

見てしまった、ショッキングな映像を振り払うかのように。

しかし、現実は非情だった。

のび太「う、ううう、うああああ・・・!?」

突然の頭痛が襲ってきて、立っていることすらままならなくなる。

脳味噌を直接揺さぶられるかのような、酷い痛み。

のび太「う、うう、うん・・・・?」

痛みの中で、のび太はふと自分の視界がぼやけて、何処か違う場所をみている事に気づく。








16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:12:55.30 ID:JICdZaHU0

それは、どこか・・・・そう、どこか、違う視界。

自分。そう、自分を正面から見る事の出来る視界。

正面から?そんなことあり得ない。だって、ぼくの視界にぼくがうつるわけがないじゃないか。

じゃあ・・・この視界は、誰の視界?

思い至るより先に、答が見つかる。

自分の視界を取り戻したのび太の前に、先程みたのとは違う、しかし同じ様に眼から血を流して笑っている人間がいたのだ。

屍人「いヒッ♪」

のび太「ど、ドラえもーーーーーん!!!!」

先程と同じように叫びながら逃げようとする。

が、頭痛と持ち前の運動神経の悪さによって転んでしまう。

のび太「あ、あわ、あわわわわわわわ・・・・・・」








17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:13:07.39 ID:JICdZaHU0

殺されてしまう。

直感的にのび太はそう感じた。

そうである事が当然かのように、その仮定は事実としてすんなりと心に入って来た。

なんとか。なんとかしなければ。

真っ白になった頭を懸命に動かして思考する。

生きるための術を。

のび太「こ、これでも食らえ!!」

ポケットから咄嗟に取り出したショックガンを屍人相手に2発撃ちこむ。

ドヒュンドヒュン!

軽快な音を立てて発射された銃弾は過たず屍人の眉間へ当たり、バチバチという電気特有の音を発して屍人の意識を奪っていった。

ドサッ

意識を奪われた屍人は糸の切れた人形のようにその場に倒れ込む。








18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:13:19.86 ID:JICdZaHU0

屍人といえど、元は人間。

意識を失えば人と同じように倒れるのだ。

のび太「い、今の内に・・・・」

よろよろともたつきながら立ち上がり、その場から走り去る。

さっき屍人が追いかけてきた方向とは逆方向に。

ズボンの一部を、川の水とは違うものでぬらしながら。

のび太(ドラえもんに・・・・・・ドラえもんにあわなくちゃ!)

それだけを、一心に考えながら。

地獄の姿を見せ始めた、この世界から逃げ出すために。







19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:13:58.50 ID:58x0Xqw10

なんで宝探しにショックガンww







21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:15:21.23 ID:nuk5VEBmO

ぶっちゃけのび太なら銃使うシナリオ余裕でクリアできるよな







22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:15:35.85 ID:JICdZaHU0

【剛田 武 初日/10:00:00 蛭ノ塚 大字波羅宿方面】

ジャイアン「はっ!」

気がつくと、森の茂みの中で横たわっていた。

体の節々が軽く痛む所と空の具合を見ると、飛ばされてから暫く気絶していたのだろうという事が分かった。

ジャイアン「全く、いってえなあーちくしょう!
でも、遠くに飛ばされなかったのと、背負ったバットを飛ばされなかったのは幸運か」

元気に素振りを2,3本してみる。

体に酷い痛みは無く、バットは思ったとおりの軽快な音を立てて振れた。

平地ではなく、木々が生い茂る所に落ちたのが痛みが少ない理由かもしれない。

ジャイアン「のび太達は皆結構遠くに飛ばされてたみたいだったな・・・
怪我してるかもしれねえし、とっとと探しに行ってやらないと」

起きてからすぐに他人の心配をし、行動を開始できる。

無意識からなるその行動は、他人から見れば十分に称賛されるものであったろう。








24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:15:56.76 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「先ずはスネオが飛んでいった方向を探しに行ってみるか。
一番、近そうな場所に飛んでいったみたいだったしな」

スネオが飛んでいった方向を大雑把に思い出しながら歩いて行く。

ジャイアン「ドラえもんに貰った道具が、探査系のなら良かったんだけどな。
当てもなく彷徨うなんて銀河鉄道以来だ」

ガサガサと、大きく音を立てて歩きまわる。

その音は、遠く離れた屍人にも伝わった。

ジャイアン「向こうの方にやぐらが見えるな・・・・それに集落も。
もしかしたら人がいるのか?」

櫓には確かに人がいた。

人ではあるが、人ならざる者が。

屍人「うっひひひひひ!」

パァン!!

ジャイアン「おおおっ!?」

破裂音と共に、ジャイアンの足下の土が吹き飛んだ。








26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:17:33.28 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「な、なんだなんだぁ!?」

動揺しながらも、生物的本能にしたがって近くの物陰に隠れる。

ジャイアン「あ、あれはアクション映画で出てきた拳銃の弾が着弾した時の動きと同じだ・・・」

手足から血の気が引き、足が震える。

幾ら豪胆なガキ大将といえど、命を狙われていると理解してしまっては、体の震えを抑える事など出来なかった。

ジャイアン「か、かあちゃん・・・・」

弱弱しく呟いて、ポケットの中の秘密道具を握りしめる。

そして、気づく。

握りしめた道具が、今の状況に相応しい道具であると。

ジャイアン「こ、これを使えば何とかなるかもしれない!」

そっと、握りしめた秘密道具を頭にかぶり、先程狙撃された場所へ恐る恐る出てみる。

狙撃音は―――――――――

―――――――――――響かなかった。








28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:18:28.16 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「やった・・・やっぱり効果があった!」

被った秘密道具は石ころ帽子。

あらゆる気配を消し、気にされなくなる道具。

ジャイアン「あんのやろう・・・俺様を狙いやがって!!
ギタギタにしてやるからなぁ!!」

命の危険が去り、冷たい気持ちが去った後の心に残るのは、激しい憤怒。

ガキ大将のプライドが、持ち前の気の強さが、火を吹いた。

ジャイアン「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」ダダダダダダッ

道の真ん中を、咆哮しながら駆け抜けていく。

狙撃元であろう、櫓へ向けて。

ジャイアン「いたっ、アイツだな!」

程無くして櫓の上に人影を見つけた。

そこまで近づいても狙撃される素振りも起きないのは、流石石ころ帽子と言うべきか。

ジャイアン「アイツ・・・・目から血を流してやがる!
ば、化けものかぁ!?」

一瞬、その異形の姿に驚くも。








30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:19:48.61 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「人じゃねえって事は、思い切りぶっ叩いても良いってことだよな」

残酷な笑みを、支配者たる暴君の笑みを浮かべて、櫓を登っていく。

ジャイアン「覚悟はできてんだろうなぁ~~~?」

屍人の後ろに立ち、ゆっくりと呟く。

ジャイアン「ぬおぅりゃぁあああ!!」

ブンッッ!!

素振りした時と同じような軽快な音が鳴り。

ゴシャッ!!

強か殴りつけられた屍人の体がひしゃげる音がして。

ドサッ・・・・・

最後に屍人が倒れる音がして。

再び辺りは静寂に包まれた。








31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:20:18.34 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「お前の物は俺の物。俺様のものも俺のものだ」

ジャイアニズムのっとり屍人から猟銃を奪い取る。

それから、ふんすと一息吐いて櫓を降りて目指していた道の先へと行く。

ジャイアン「こんな化け物がいるんなら、益々皆が心配になるな。
待ってろ、今俺様が行ってやるからな!」

地獄の中でも猛々しく。

鼻歌歌って跋扈する。

ガキ大将は、今もどこかで苦しんでいるであろう仲間を想いながら、道を只管進んでいった。

目の前ひらけている、集落へと向かって。








32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:20:38.75 ID:JICdZaHU0

【源 静香 初日/11:57:32 蛭ノ塚 県道333号線】

しずか「ダメだわ・・・誰もいないしどこでもドアもない・・・・」

飛ばされてから気絶すること無かったしずかは、飛んでいる時の僅かな記憶を頼りにここまで戻ってきていた。

誰かがいる事を願って。

しかし、戻って来たもののそこに人影は無く、あるのは公然とした静寂だけだった。

しずか「誰の視界もないし・・・・ここにはいないみたいね」

視界ジャック試みるも、ジャック出来る視界は無く頭の中にはノイズが広がるだけだった。

しずか「最初は何かと思ったけど、結構この能力も使えるわね」

その適応力は、秀才だから故か。

起きてからしずかはすぐに視界ジャックを習得し、その能力を最大限に引き出して屍人の群れを避けてここまで来ていた。

しずか「早くのび太さん達に会わないと・・・・心配だわ」








33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:20:56.99 ID:JICdZaHU0

ざくざくと足下の土をかき分けながら懸命に歩いて行く。

しずか「ん、あそこの上へ行けば道が良く見えるかしら」

上を見上げると、土砂崩れの影響で少しだけ視界が開けそうな場所が見えた。

転ばないように、必死に上へと登っていく。

もしかしたら、のび太達がいるかもしれない。

もしかしたら、何か解決の糸口が見つかるかもしれない。

もしかしたら、希望が見つかるかもしれない。

そう思って登っていった。

その先には。

しずか「なに・・・・・これ・・・」

目の前に広がる紅い海。

そこへぞろぞろと移動する人達。

これが『海送り』と呼ばれる事象であるのをしずかは知らなかったが、それが異常な光景だというのは理解出来た。








34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:21:15.19 ID:JICdZaHU0

そもそもここ羽生陀村は内陸のはずなのに、今は辺り一面を全て紅い海で囲まれている。

それはこの異常な事態を視覚に伝えるとともに、逃げ場が無い事を象徴している様にも思えた。

???「誰か、誰かいるのかい!?」

あまりの光景に言葉を失っていると、後ろから声をかけられた。

今まできいてきた屍人のそれと違う、確かな人間の声で。

しずか「います、いますよ!」

振り向いて、声を出した主の元へと駆けよる。

声をかけた人物は目から血も流していなかったし、同伴者を連れているがその子も異常は無いようだった。

しずか「ああ、わたしの他にも無事な人がいたのね!」

やっと仲間と呼べそうな人物達に出会えた。

その事実は、少なからずしずかを勇気づけ、沈んでいた心に一筋の希望を与えた。

???「あなたも、無事だったんですね」

声をかけてきた人物の後ろに隠れていた少女が、ようやく警戒を解いたかのように話しかけてきた。








35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:22:27.20 ID:JICdZaHU0

???「私、サイレンがなってからずっと逃げてて、それでこの人に出会って・・・」

少女の言葉は要領を得なかったが、言いたかった事はなんとなく理解出来た。

この子も、わたしと同じなのだ。

気づかぬうちに、理不尽な現象の被害者になって。

不安で不安で、やっと誰かに会えて。

牧野「自己紹介が遅れたね。僕は牧野、牧野 慶。この村で求道師をやっているんだ。
それでこの子は――――」

前田「前田友子、です。両親と喧嘩して、家を出たら、こんな目に」

ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!

友子が言い終えるか言い終えないかのうちに、けたたましいサイレンが、島全体に鳴り響いた。

3人「う、うあああ!!」

サイレンの音は脳を蝕み、心を苛む。

最初の時ほど頭痛は酷くないものの、それでも脳を揺さぶる事には変わりなかった。








36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:23:00.51 ID:JICdZaHU0

屍人「う゛ああ゛ーー」

サイレンの音に呼応するかのように、遠くで屍人の声が聞こえた。

牧野「ここは危ない、はやく逃げよう!えっと―――」

しずか「源 静香です。そうですね、早く逃げましょう!」

タタッと近くの石を蹴り、走り出す。

その姿は、男である牧野よりも逞しく見えた。

牧野「ちょっと、比沙子さんに似ているかも知れない・・・」

そんな事を呟きながら、牧野もあとを追った。

友子も、置いてかれないようにそれについて行く。

進んで、進んで、進んで。

隠れて、隠れて、隠れて。

暫く進んでいくと、大きな段差があった。

牧野ならばよじ登れそうだったが、小学生と中学生の女の子には到底登れそうにない程度に大きい崖が。








37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:23:20.36 ID:JICdZaHU0

牧野「僕が先に登るよ。あとから引っ張ってあげる」

よっこらしょっと、頼りなくよじ登る。

しずか(なんか、頼りない人ね・・・のび太さんみたい?ううん、のび太さんは
こういうときは凄く頼りになるわ)

未だ安否の知れない友人の姿を目の前の男に重ねて、首を振った。

ガラッ

牧野「おっと・・・」

脚を踏み外したのか、牧野が足下にあった崖の石を転がしてしまった。

日常生活ならば気にも留めない些細な音。

そんな音でも、この非日常の異常世界では、十分に危機を招く要因となり得た。

前田「狙われてる!!」

キュイン!!

友子が叫ぶと同時に、牧野が登りきった崖の辺りに銃弾が当たる。

牧野「う、うわぁ!」

情けない悲鳴をあげて牧野は後ずさる。








40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:24:42.58 ID:6n9Uc/GG0

あのシーンか







41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:26:00.92 ID:JICdZaHU0

しずか(ダメ、頼れない!)

瞬間的に、判断する。

牧野さんは、求道師と名乗った男は、今この場で私達の命を助けてくれるものではないと。

しずか「友子さん、こっちよ!」

牧野が登った崖によじ登る事は諦めて、狙撃手のいる方とは別の場所へ走っていく。

前田「え、でも牧野さんがっ!」

牧野「僕なら大丈夫、二人で逃げて!」

へっぴり腰になりながら、牧野が叫ぶ。

牧野は心のどこかで安心していた。

これなら自分は狙われにくいだろうと。

危険を冒して助けなくても平気だと。

表には出さずとも、確かに思っていた。

タタタタタッ!!

脚音を響かせてしずかと友子は逃げ出した。

牧野も何とか立ちあがって逃げ出した。








42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:26:17.14 ID:JICdZaHU0

狙撃手は懸命に追おうとするも、どちらを狙うか決めあぐねて、両方とも逃がしてしまった。

屍人の知能がそこまで高くなかったのが幸いしたのだろう。

逃げる。

逃げる。

その場から。

現実から。

しずかと友子、牧野はそれぞれ別の道を逃げる。

その先に待つものは希望か、絶望か。








48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:29:21.53 ID:JICdZaHU0

【骨川スネオ 初日9:00:00 蛇ノ首谷 折臥ノ森】

スネオ「んあ、ママぁ・・・?」

スネオが再び目を覚ますと、そこは倒れたままの場所だった。

もしかしたら夢であってくれたらと思っていたが、現実はそこまで甘いものではなかった。

スネオ「ど、どど、どうするべきなんだろう・・・」

通報か、知らぬふりか。

どちらにしても、危険が伴う事には変わりなかった。

スネオ「とりあえず、本当に人だったのか確かめてみよう。もしかしたら、起きぬけで
幻想を見てたのかも知れないし」

そうであってくれと祈りながら、恐る恐る現場を見てみる。

そこには、散乱したビニールシートと土塊があるだけだった。

スネオ「ホッ・・・やっぱり見間違えか何かだったんだ。
はは、そんな人なんて埋めるわけないよな・・・」

胸を撫でおろすと、今度は何か違和感に襲われた。








49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:29:39.53 ID:JICdZaHU0

スネオ「な、なんだろう・・・視界が・・・・」

視界が変わる。

自分の物ではなく、どこか別のものに。

スネオ(誰かの・・・視界・・・?なんでぼく、人の視界みてるんだろ?)

疑問を解く術をみつける前に、事態は動いて行く。

スネオ(視界の端にぼくのトンガリが・・・!?)

慌てて、自分の視界を取り戻す。

音をたてないように視界の元を探ると、人影が見えた。

目に血を湛えて、にやりと笑う人影が。

スネオ(ばっ、化けものっ!!)

声を出さずに叫ぶ。

正確には、恐怖のあまり声を出せなかったが正しいが。

スネオ(良くわからないけど、何かとてつもなくヤバい状態みたいだ!
一刻も早くここから逃げないと!)

だが、気づかれないように移動するのは不可能に近かった。








51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:30:05.17 ID:JICdZaHU0

化けもの、屍人はすでに近くまで来ている。

更に足下には枯れ枝や木の葉の類が散乱している。

身じろぎひとつするにも音を伴う状況なのだ。

スネオ(仕方ない・・・ここはちょっともったいないけど・・・)

そう言って、ポケットから財布を取り出す。

スネオ(10円硬貨を・・・・音を出さないように・・・・)

そっと掌に10円硬貨五枚ほど乗せる。

スネオ(どこでもいいから、ここ以外の所へ・・・!)

あくまで音をたてないように、それら五枚を思い切り投げた。

チャリーン!チャリーン!チャリーン!

投げられた10円玉は遠くへと落ち、音を立てる。








52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:30:23.05 ID:JICdZaHU0

コンクリートに落ちた時のような鋭い音はしないものの、地面の石にぶつかった10円玉は音を立てる。

その音量は、屍人の注意を引くには十分だった。

屍人「うへぇ、うへえへぇ!」

ぬらぬらと纏わりつくような笑い声のようなものを発しながら、音のした方へと屍人が向かっていく。

スネオ(今の内に・・!)

屍人がある程度離れたのを見届けると、その場からそっと逃げ去った。

不名誉ながら逃げるのにはなれていたので、思ったよりも静かに逃げる事が出来た。

スネオ(ジャイアンのお陰かな・・・・感謝はしないけど)

胸にしまっていたペンライトを使って薄暗いあぜ道を通り抜ける。

視界ジャックを使って、見つからないように進みながら。

暫く進むと、固いアスファルトの上に降り立つ事が出来た。

どうやら、道路に出る事が出来たらしい。

スネオ(安心は出来ないけど、山道を歩くよりはマシかな。
もしかしたら、車が通りかかってくれるかもしれないし)








54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:30:48.86 ID:JICdZaHU0

一段落ついてほっと胸をなでおろしていると、車が置いてあるのが見えた。

スネオ「何か使えそうなものが置いてないかな」

動かないとはわかっていても、これを調べない手は無い。

今は地図の一つだけでも欲しい状況なのだ。

スネオ「うーん、特にめぼしいものはないな・・・・
なんだいなんだい!こんな高そうな車のっちゃってさ!」

そうやって車に傷でも付けてやろうかと考えたところで、助士席の下に何かがあるのを発見した。

スネオ「これは・・・・発煙筒かぁ。なんかに使えるかな、持っておこう」

発煙筒を乱暴にポケットに突っ込み、車の先に見える道に向かおうとする。

が。

スネオ(霧で良く見えないけど、誰かいるみたいだ!)

視界ジャックをして相手がどのような奴なのか確認する。

スネオ(やっぱり化けものか・・・手に持っているのは、猟銃!?そんなバカな!ここは日本なんだぞ!?)








55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:31:10.93 ID:JICdZaHU0

山々に囲まれた辺境の地ならばあり得ない話ではないと思いつつも、日常からかけ離れ過ぎている

その黒光りする砲身に、思わず身震いする。

スネオ(そのまま突っ込む事は出来ない・・・・仕方ない、ドラえもんの道具を使わせて貰おう)

ポケットから四角い塊と、ゲームのコントローラーのようなものを取り出す。

スネオ(ははっ、ぼくの家はお金持ちだからね。ポケットも上等な生地で作られてるから
多少大きいものでも入れる事が出来るのさ!・・・・ってぼくは誰に自慢してるんだろう)

言いながら、ポケットから取り出した塊をちぎってミニチュアの車のような形にする。

スネオ「それじゃあ行って来い!ラジコン粘土!」

コントローラーを操作して、小さいミニチュアの車を操作する。

向かうはもちろん、屍人の元。

屍人「お゛!?おあ゛あ?」

突然迫ってくる小さい物体に多少驚きながらも、屍人は容赦なく猟銃を構える。

タターン!!タターン!!

2発、3発と銃弾を撃つも、小さな物体はまるで打たれるのが分かっているかのように弾をよけてしまう。








57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:32:39.47 ID:JICdZaHU0

スネオ(ははっ、視界ジャックされてる事に気づいてないでやんの。
標準があった時に曲がるだけでいいんだから、簡単だい!)

タターン!タターン!!

尚も撃ち続けるも、一向に当たる気配は無かった。

屍人「あう゛お゛ぇ゛が!」

ついに憤慨して、屍人は猟銃を投げ捨てて踏みつぶしにかかった。

しかし、それすらも小さい物体は避けてすいすいと逃げて行ってしまう。

屍人「お゛う゛え゛、おう゛あ゛!」

踏みつぶせない苛立ちに、我を忘れて追いかける屍人。

ただ一心に踏みつぶすために追いかけていく。

その先に、川へと続く崖があるのにも気づかずに。

屍人「お゛うぇあ゛!」

崖の縁でちょろちょろと動く小さな物体を踏みつぶそうと、奇妙なダンスを踊る屍人。

ドズン、ドズンと音が経つほどに力を込めて踏みしめる脚が、崖の縁で持つわけもなく。








58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:33:05.21 ID:JICdZaHU0

屍人「あお゛、うあ゛、え゛う!・・・・・あ゛?」

疲れ果てた脚は意志に反して硬直し、屍人の体制を大きく揺るがせた。

上半身だけが動こうとし、下半身だけが止まっている。

そんな体制を維持出来るはずもなく。

屍人「あ゛あああ゛あ゛あああーーー・・・・」

情けない声と共に、屍人は崖の下、川の中へと落ちていった。

スネオ「化けものって案外バカなんだなぁ。なんかちょっとだけ、怖がって損した気分」

屍人の捨てていった一発だけしか残っていない猟銃を拾い、先へと進む。

猟銃に気を取られていたスネオは気づかなかった。

近くの看板に、この先宮田医院と書かれていた事を。

して彼が向かう先が、惨劇の舞台であることも。







60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:33:19.99 ID:JICdZaHU0

【宮田 司郎 初日/3:34:17 蛇ノ首谷 折臥ノ森】

宮田「こんなところにガキが・・・
見られていたとしたら、殺すべきか?
いや、これ以上証拠を残す必要は無い。
それに、死体がどこへ行ったのかも気になる。
どうせその辺でのたれ死ぬだろうから、気にする必要もないか」








61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:33:44.42 ID:JICdZaHU0

【ドラえもん ??? ???】

ドラえもん「」

ドラえもん「」

ドラえもん「」


???「こ、こいつぁ・・・?」








62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:34:12.92 ID:JICdZaHU0

【源 静香 初日/???? 蛭ノ塚 県道333号線】

しずか「そう、じゃあお母さん達と喧嘩して・・・」

前田「うん、些細なことでなんだけどね」

しずか「今は、もう会いたいんでしょう?」

前田「うん、淋しいよ。お父さんとお母さん、大丈夫かなぁ・・・」

しずか「きっと大丈夫よ!心配しちゃダメ。どんどん悲しくなってしまうわ」

前田「そうよね・・・。しずかちゃん、なんだか強いね」

しずか「強い?」

前田「こんな状況なのに敢然と立ち向かってて・・・私より年上のお姉さんみたい」

しずか「ちょっとだけ、冒険してるからね」

くすりと笑い、遠くを見る。








63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:34:36.17 ID:JICdZaHU0

靄にかかった道も、今だけは静かに見守ってくれてるように見えた。

前田「ねえ、この変な状況が去ったら、お話きかせてよ。冒険の」

しずか「ええ、約束するわ」

前田「・・・・・生きましょうね」

しずか「もちろんよ!・・・・・あら?」

しずかが前に目を向けると、そこには一人の女性が立っていた。

一瞬屍人かと思って身構えたが、近づいてくる女性は穏やかな笑みを顔に浮かべているだけで、

屍人のそれのようなものは全く見受けられなかった。

???「あなたたち・・・大丈夫だった?」

前田「八尾様!」

しずか「八尾様?」








65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:34:54.30 ID:JICdZaHU0

前田「この村の求導女様で、とても優しい人なのよ!ああ、こんなところで会えるなんて・・・」

八尾「怖かったでしょう?もう大丈夫だわ・・・」

そういって、友子の事を八尾は優しく抱きしめた。

慈愛に満ちたその姿は、聖母にすら見えた。

しかし。

しずか(何かしら・・・・凄いいやな感じがする・・・)

最初は、求導という言葉を聞いて、不甲斐ない牧野を連想したからだと思った。

八尾「そこのお嬢さんも・・・・もう大丈夫よ」

だが、どうやらそれはあまり関係ないと思い直した。

しずかは、八尾に声をかけられた瞬間何か掴まれる様な錯覚を感じた。

堕とされる様な、絡め取られる様な感触を。








66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:35:11.73 ID:JICdZaHU0

八尾「さあ、こっちへいらっしゃい。安全な場所があるの」

そう言って、八尾は奥へと進んでいく。

前田「大丈夫よ、八尾様は、求導女様だもの」

友子がいぶかしむしずかの手を引いて八尾を追う。

タッタッタッタッタ・・・・

規則正しく響く足音三つ。

何時の間にか、柔らかく感じていた気配が、重く苦しいものに変っていた。

八尾「ここよ」

どれだけ歩いただろうか、そろそろ足も限界に近付いたあたりで、小さな小屋についた。

小屋、というよりも小さな社だろうか。

ある種の怖さすら感じるその建物の扉を開けると、八尾は入るように促してきた。








67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:35:32.22 ID:JICdZaHU0

前田「八尾様は入られないのですか?」

八尾「私は、いいわ。他にもまだ道に迷っている人を、助けなければならないもの」

前田「でも、危険ですよ!!」

八尾「それでもやらなければならないわ。それが私の務めだもの」

凛とした調子で八尾は言った。

八尾「さあ、お入りなさい」

促されるままに、前田としずかは小屋へと入る。

扉を閉める際に、八尾は顔に微笑を湛えたまま言った。

八尾「痛いのは一瞬。あとは素敵な世界へ行けるわ」

前田「え・・・・?」

ガチャン

扉のしまる音に続いて

カチャン

鍵のしまる音がする。








70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:36:36.44 ID:JICdZaHU0

それから一呼吸置いて。

屍人達「うわ゛え゛お゛あ゛!!」

小屋の奥から何体かの屍人が湧き出てくる。

まるで餌が来たとでも言うかのように。

屍人達は声を張り上げて近づいてくる。

前田「いやあああああああ!!!!!」

しずか「やっぱり・・・・騙されたんだわ・・・」

絶望。

信じていた人に裏切られる気持ち。

心の奥底を、黒色が塗りつぶそうとする。

しずか「・・・・・・・・ここで」

しずかの心は、黒色には塗りつぶせない。

しずか「ここで止まるわけにはいかないわ!」

小さな冒険が培ってきた心は、命の危機に頻しても、未だ輝きを失わない。








71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:37:00.91 ID:JICdZaHU0

しずか「ドラちゃん!!力を貸して!!」

スカートの辺りに付いているポケットを探り、ドラえもんから受け取った秘密道具を取り出す。

どんなものをも止める道具を。

しずか「相手ストッパー!!」

ピタアッ!!

しずかが相手ストッパーを屍人達に当てると、屍人達の動きは、たちまちのうちにとまってしまった。

正確には、屍人達の足が止まってしまった。

しずか「今の内よ!」

何が何だかわからないという様子の友子の手を、今度はしずかが強く引いて、走り出す。

屍人に捕まらないように屍人の横を通り抜け、奥の部屋へとつき抜ける。

その先にあるのは――――――




――――――――長年の放置により、腐りきって脆くなった壁が。








73
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:37:54.80 ID:JICdZaHU0

しずか「女の子のする事じゃないけど・・・・友子さん、せーのでぶつかるわよ!」

前田「う、うん」

しずか「・・・・・せーのっ」

ドンッ!!ガシャーン!!

予想よりもはるかに呆気なく壊れた壁を突き抜けて、しずか達は外へと脱出した。

しずか「いったぁーい・・・・友子さん大丈夫?」

前田「私は大丈夫・・・でもあなたは一体・・・?
どうやって化けものの足をとめたの?」

しずか「説明はあとよ!今は、ここから逃げましょう!」

もう一度友子の手を取り、走り出すしずか。

その姿に、友子は求導女の影を見た。

前田(もしかしたら、この人が本当の・・・・・・・?)

答は今はまだ、出る事は無い。


74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/06(水) 22:38:33.45 ID:JICdZaHU0

第一章、異界 終









第二章に続きます
http://kanisokuhou.doorblog.jp/archives/51068714.html



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